鍼治療について

鍼治療とは、鍼を身体に入れたり、皮膚に接触させたりすることで、様々な反応が身体に起こりますが、それを利用して体調を整えようとする方法です。

鍼の効果

①調整作用

組織、器官に一定の刺激を与えて、その機能を調整する作用です。例えば、感覚が鈍くなっていたり、運動麻痺を起している部位に対して鍼を刺す事でその組織、器官を興奮させます。
また、異常に機能が興奮している場合においては、鎮静する作用があります。

②誘導作用

局所、遠隔部に鍼を刺す事で、血流の調節をします。局所の血行障害に対して直接その部位に鍼をすることにより他の健康な部位から誘導して血流を改善させます。
また、局所の炎症、充血に対してはそこから離れた場所に鍼を刺す事で、血液を誘導し、炎症、充血が酷くなることを抑える作用があります。

③鎮痛作用

鍼を刺すことにより、内因性モルヒネ様物質(鎮痛物質)が発生し痛みを抑える作用です。

④防衛作用

白血球や大貧食細胞などを増加させて、各疾患の治癒機能を促進させたり、身体の防衛機能を高める作用があります。

⑤消炎作用

鍼を刺す事により白血球が増加し、患部に集まり炎症を抑えます。また血流改善により発痛物質などの吸収を促進させる作用です。

鍼のトラブル

①気胸

肩周りや前胸部、肋骨の近くに多いですが、筋肉と肺、胸膜との距離が短い場所に鍼を深く刺入することで、肺や胸膜が傷つき、急な胸の痛みや、刺激性の咳、呼吸困難などの症状が出ます。
予防としては、薄い筋肉に対しては鍼をまっすぐに入れるのではなく、斜めや横に倒して角度を付けた刺入を行い、深さがない分、広く筋繊維にアプローチできる方法をとります。鍼が立っていないので毛布などを掛けても重みで鍼が沈んでいく心配もありません。
ある程度経験がある鍼灸師なら気胸のリスクはかなり低いと思いますが、臨床経験が浅い学生同士の実技の時間や、置鍼中に目を離してしまった時、体勢を変えるなど患者さんが動いてしまった時に鍼が深く入って起こってしまうといった場合が考えられます。多少身体を動かした程度ではそこまで鍼の深度は変わりませんが、筋肉の収縮などで痛みが出る場合もあるので、安全のため、身体を動かしたい時は治療している者に指示を仰いだ方が良いと思います。不安な方は治療される前にご相談ください。

②内出血

皮膚、筋肉等で毛細血管を傷つけた場合に起こります。刺入した部位の周りに青あざが出来、一週間程度で消失します。痛みはほとんどありません。
内出血は注意していても起こる場合がありますが、特に血管が脆くなっている方は内出血が出来る確率は高くなります。前柔、後柔を入念に行ったり、細い鍼を使用することで内出血が起こる確率を減らします。内出血が出来た場合はむやみに揉んだりせずに、痛みが出ない程度の圧迫を行い、患部の周りに対してアプローチすることで、腫れや青あざの治りが早くなります。

③貧血

刺激により迷走神経反射がおこり脳循環血流量が減少して発生します。顔面蒼白、冷や汗、吐き気、失神などの症状が現れます。
迷走神経反射が起こりやすい方は、鍼治療に対して不安感が強い人や感受性が高い人に起こる傾向があります。また強い刺激に対する身体の反応として出る場合もあります。治療を行う前に不安感がある方に対して十分な説明は行いますが、それでも鍼にたいして不安が拭えない方は、無理をせずお灸やマッサージでの治療にした方が良いと思います。治療中に気分が悪くなったら場合は我慢せず申し出てください。座位、立位での治療も慣れていない方だと体調が悪くなることがあるので、鍼を初めて受ける方などは、寝た状態いで治療をさせていただきます。